指導者・井之脇美緒子の想いと共に 新生コーラル・アーツ・ソサイアティ

🎼 30回の定期公演を重ねた、歴史ある合唱団

コーラル・アーツ・ソサイアティ × 指導:井之脇美緒子

 

コーラル・アーツ・ソサイアティは2025年5月で、30回の定期演奏会を成功させてきた歴史ある合唱団です。

かつて100名を超える大合唱団として、オーケストラとともに大曲を演奏し、日本はもとよりドイツ公演など幅広い活動で、ホールを響かせてきました。指導を担う井之脇美緒子氏は、当時東京都4つの練習会場を巡りながら精力的に指導を続け、その熱意と献身により、団は一時代を築きました。しかしその華やかであるオーケストラ・名指揮者との共演の話題性や成功の陰で、井之脇氏が本当に目指すべきは「アマチュアの合唱団員一人ひとりが、いかに音楽に真摯に向き合い、鍛錬し、上達を目指すことではないか……」そのような思いを巡らせていった、否、もとよりそうすることが願いであり使命であったのではないかと葛藤していったと話します。(2023年秋・練習中のお話より 於SDA小金井教会)

 

🎶 「詞(ことば)と響き」でつながる、その先へ……コーラル・アーツ・ソサイアティの挑戦

 

転機となったのが、新型コロナウイルスのパンデミックです。2019年6月、第27回演奏会すみだトリフォニーホールでのオーケストラ共演「メンデルスゾーン エリアス」を最後に2020年~2022年の演奏会は見送られます。コロナ禍で多くの音楽活動が制限され、C・A・Sも2020年演奏曲「フォーレ レクイエム」「ジョン・ラター マニフィカート」に取り組む中での練習中断を余儀なくされました。しかし、井之脇氏はこれを「好機」ととらえます。団員に呼びかけ、発声・発音の基礎訓練、Zoomオンラインによる個別指導、録音での客観的確認など、趣向を凝らした取り組みを次々と展開。正に転んでもただ手をこまねくことなく、前向きに進み続ける「情熱と熱意」は衰えず変わらず健在でした。

様々な事情により、合唱団の人数は大きく減小しましたがそれでもなお、井之脇氏に指導を受け学び続けようとするメンバーが残り、2022年初夏よりソーシャルディスタンス徹底の中、対面練習を再開します。

 

2023年5月 第28回演奏会

ピアノ・オルガン・トランペットの伴奏による「バッハ モテット・バッハ カンタータ・宗教小曲」の構成で演奏会を再開。曲は内省的かつ高い表現力を要する作品に果敢に挑戦しました。特に難しかった外国語の「詞(ことば)」を正しく発音する訓練、豊かな響きを目指す発声訓練は、毎回練習には欠かせない上達を目指す重要な「鍛錬」です。バッハ モテットは丁寧な発音を意識した「詞(ことば)」とアカペラのハーモニー、バッハ カンタータはピアノとオルガンの調和、何よりも高らかなトランペットの音色に引き込まれるお客様も多かったのではないでしょうか。新生コーラル・アーツ・ソサイアティ初演に多くのお客様が温かい拍手を送ってくださり団員は確かな手応えを感じます。客席で演奏を聴き、団に戻られる方もおりました。本当に嬉しいことです。

 

2024年5月 第29回演奏会

「フォーレ レクイエム」「メンデルスゾーン 詩編」2019年オーケストラ共演曲となった「メンデルスゾーン エリアス」より3曲を抜粋。合唱・ソロ・パイプオルガン・ピアノによる演奏。団員はもとより、パイプオルガンの音の迫力に圧倒されたというお客様も少なくはありません。「フォーレ レクイエム」は2020年演奏会に向けて取り組んでいた楽曲。いろいろな思いが巡ります。演奏会の魅力として、ソリストの存在抜きでは語れません。ソプラノ/松井亜紀さん、バス/奥秋大樹さん、パイプオルガン/木村理佐さん、いずれも第一線で活躍されている方々がソリストとして加わってくださいました。松井亜紀さんは、CASソプラノヴォイストレーナーとしてご指導いただいた時期もありました。団員にとって、実力を備えられているプロ演奏家と同じ舞台に立つことはオーケストラ共演時代と変わらず、心地よい緊張と、さらなる向上心に繋がっていくでしょう。

 

そして今年5月、2025年第30回演奏会を終えました。ここで初めて日本語の歌にも取り組みました。普段慣れ親しみ話しているはずの「日本語」も聴衆の心に響く音楽として表現することの難しさ。旋律と詞(ことば)で伝えるもの、伝わるもの、伝えたいものを作詞者、作曲者の意図を的確にくみ取り表現する。アマチュア合唱団の可能性をもっともっと追求し、模索しています。

井之脇美緒子氏の厳しくも時にユニークな、そして卓越した指導のもと、今も団員一人ひとりが声と心を磨き続けています。新生コーラル・アーツ・ソサイアティは静かに、しかし確実に再生を遂げています。